AI USE
FIELD NOTES

PRACTICAL READING

AI広告はなぜ嫌われる? 研究から考える、評価と気持ちのすれ違い

見た目が整えば受け入れられるのか。使い込めば抵抗はなくなるのか。作品の評価実験と広告への意識調査から、分かることと未解決の問いを整理します。AI利用の推奨ではなく、作り手が考えるための読み物です。

「AIが嫌い」を、3つの問いに分けてみる

これは編集部による整理です。研究で確立された分類や、批判をする人の診断ではありません。権利や仕事への懸念など、ここに収まらない論点もあります。

反応を決めつけず、どこを確かめるか考える
問いの入口確かめたいこと考え方の例
出来への疑い実物と違う、読めない、不自然という指摘か。まず完成品のどの部分を指しているか確かめる。実物や原資料と並べて修正する。制作方法の説明だけで、仕上がりの確認を終えない。
作品の意味への疑い見た目の好みか、誰が何を表した作品なのかという問いか。作者の表示が評価に関わった実験は本文1・2へ。何を表したくて、何を選び直したのかを具体的に示す。その説明に価値を感じるかは、受け手に委ねる。
気持ち・説明への疑い誰の気持ちや体験として語っているか。文章を作った工程と、受け手が想像する送り手にずれがないか。本文3・4へ。本人の体験や言葉を核にする、AIを編集補助にとどめる、事実の案内に使う、といった選択肢を比べる。

この読み物の要点

  1. 見た目の評価には、誰が作ったと思うかも関わる。作品の評価実験を広告全般の結論にはしない。
  2. 感情を伝える文と事実を伝える文、完成品の生成と編集の補助を分けて考える。
  3. 作り手の努力・使い手の便利さ・受け手の納得を、それぞれ確かめる。改善案の効果はまだ約束できない。

研究結果と、そこから考えた編集上の選択肢を分けます。個々の批判の原因や、広告の売上への影響を特定するものではありません。

1. 同じ絵でも、作者の表示が評価に関わる

Bellaicheらの2023年の研究では、実際にはAIで作った絵に「人が作った」「AIが作った」という表示を無作為に付けました。分析対象は研究1が149人、研究2が148人。参加者はそれぞれオンラインのMTurkとProlificで募集され、研究2は英語を母語とする人が対象でした。いずれも、人の作品と表示された絵が、好み・美しさ・深さ・金銭的な価値の評価で高くなりました。研究1では、好み・美しさの差より、深さ・金銭的な価値の差の方が大きくなりました。違いは絵の出来だけでは説明できない、という結果です。ただし絵画を評価する実験であり、あらゆる広告や日本の消費者に同じ差が出ると示したものではありません。出典1。

2. 「人も関わった」と伝えれば十分なのか

Hortonらの2023年の論文は、6実験・論文記載の計2,965人を対象に、作品の作り手の表示と評価を調べました。そのうち共同制作を扱った実験6は、米国の人口構成を代表するように集めた527人が対象でした。参加者はまず「人だけ」または「AIだけ」が作ったと説明された絵を見て、次に共同制作と説明された別の絵を評価しました。2枚は事前テストで創造性・金銭的価値・制作時間の評価が同程度とされ、共同制作のAIは、自ら想像して描ける自律的な共作者として説明されていました。この条件では、共同制作と説明された絵の評価は、平均すると両単独条件の間に位置しました。これは説明の効果がいつでも同じという意味ではありません。編集部の読み方としては、「人も考えた」という一文で理解されたと決めず、どんな判断をしたのかまで伝わったかを確かめたいところです。出典2。

3. 気持ちを伝える文章は、誰の言葉に見えるか

KirkとGiviの2025年の論文要旨は、事前登録した7実験で、顧客に向けた感情を伝えるメッセージ(販促文など)をAIが書いたと受け手が思うと、人が書いたと思う場合に比べ、好意的な口コミと顧客ロイヤルティが下がったと報告しています。本物らしさ(送り手自身の気持ちに見えるか)と、道徳的な嫌悪が結果を説明する要因でした。一方、事実中心の文、AIが編集だけをした場合、AIが直接署名した場合、こうしたメッセージの大半はAIが書いていると受け手が思う場合の4条件では、差が弱まりました。さらに、使い回しの文だと思われる条件では逆転も報告されています。「人が書けばいつでも誠実」とは言い切れない条件を含む研究です。ここでは公開要旨の範囲を紹介し、有料の全文は未確認です。出典3。

4. 広告では、AIに任せる範囲で受け止め方が違う

Bentley UniversityとGallupは、2026年5月4〜11日にGallup Panelの米国成人3,270人へ調査しました。以下の3項目はいずれも、AI利用が明示されることを前提に尋ねています。アイデア出し・初期の下書きを75%が容認し、完成した広告文・画像・動画の生成は53%が容認しました。一方、広告に使う人物や声の生成は62%が容認しませんでした。前の数字は「容認」、最後は「容認しない」の割合です。回答割合が50%付近の場合の標本誤差は、95%信頼水準で±2.4ポイントとされています。これは米国での利用方法への態度を尋ねた調査で、実際の購入行動や日本での割合を示してはいません。編集上の選択肢として、AIを使うかどうかに加えて、発想・編集・最終表現のどこを任せるかも分けて考えられます。出典4。

5. 時間がたてば、抵抗は消えるのか

Pew Research Centerの米国調査では、日常生活でAI利用が増えることについて「期待より不安が大きい」と答えた割合は、2021年の37%から2026年の52%になっています。2026年分は6月22〜28日に成人3,488人へ実施した調査です。これは社会全体の回答割合の比較で、使い続けた同じ人の気持ちが変わったことを示す数字ではありません。インターネット普及期との直接比較でもなく、今後抵抗が消えるか、残るかはこの資料だけでは決められません。出典5。

6. 作り手の「手間をかけた」も、別の人に確かめる

Nortonらの2012年の研究では、箱の組み立てや折り紙など、自分で完成させた物を高く評価する「IKEA効果」が報告されています。参加者は、自分の作品への評価を他の人も共有すると期待していました。ただし、完成に失敗したり、作った物を壊したりすると効果は消えました。AI広告を調べた研究ではありません。ここからの編集上の考え方は、かけた時間と受け手に届く価値を同一視せず、制作に参加していない人の読み方も聞いてみることです。出典6。

考え方の例:過程を見せるなら、選んだ理由を添える

ここからは研究結果そのものではなく、編集部の選択肢です。例えば店の紹介なら、「AIで作りました」に加えて、「落ち着いて過ごせる雰囲気を伝えるためにこの構図を選び、料理と価格は実物・原稿と照合しました」と、実際に行った判断を示す方法があります。これは架空の説明例です。説明のために作業をしたふりをしたり、手間を多く見せたりする必要はありません。お礼や応援を届けたい場面では、本人が何を見て何を感じたかを核にし、AIを文の整理に使うかどうかを選ぶ方法もあります。こうした説明や工程が評価を改善するかは、今回の資料では未検証です。

考え方の例:説得する前に、伝わり方を小さく比べる

これも編集上の試し方で、推奨する唯一の手順ではありません。同じ完成品について、制作方法だけの説明と、制作方法に判断の理由を添えた説明を用意し、制作に関わっていない人に見てもらう。「誰の、どんな気持ちや体験に見えたか」「信じにくい所はどこか」「商品について何を期待したか」を聞き、説明で解ける疑問と、作品を直す必要がある指摘を分けます。AI利用は隠さず、必要な表示や素材の利用条件も別に確かめます。少人数の反応を世論や売上の予測にはせず、意見が分かれたまま残すこともできます。

運営の中で出た疑問

ネット普及期のように、みんなが使えば抵抗はなくなる?

運営の対話で出た問いです。使う人が増えること、便利だと思うこと、広告として好むことを分けて考えます。本文3には、顧客向けメッセージの大半はAIが書くと思われている場合に差が弱まった実験もありますが、時間とともに態度が変わるかを追ったものではありません。本文5の調査も将来の変化やインターネットとの同一性を証明していません。「いずれ慣れる」を前提に制作するかどうかは、まだ答えの出ていない判断です。

人が自分の手で作った物にしか価値がないの?

本文1・2は、限られた条件で人がどう評価したかを調べた研究です。作品の価値を一律に決める規則ではありません。どんな体験を表したか、仕上がりをどう感じるか、制作にどんな意味を見いだすかを、別々の問いとして残せます。

批判する人は、課金して使い込んでいないだけでは?

運営の対話で出た仮説で、確定した説明ではありません。ここで紹介した資料には、有料で使い込む前後を追い、AI広告の評価がどう変わるかを直接確かめたデータはありません。使ってみて分かる便利さと、受け手として大切にしたいことがどう関係するかは未解決です。利用経験を聞くなら、同時に何への不満なのかも聞く、という考え方があります。

作り手も考えている。そのことをどう言えばいい?

「考えた量」の主張に加えて、「何を伝えたくて、何を採り、何を直したか」を、自分が実際にした判断として伝える方法があります。本文の架空例も、そのための選択肢です。ただし、説明を足す効果は未検証で、納得を求めすぎないことも選べます。受け手の評価と作り手の思いが一致しないままでも、次に直す場所を見つける対話にはできます。

出典・元資料

初版:2026-09-29 · 最終確認:2026-09-29 · AI USE FIELD NOTES

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